第1回の今回は大原鉄工所で最多の南極地域観測隊参加回数を誇るベテラン「古見直人」さんにお話を伺ってきました!
今回のインタビュアーは吉田と山本で行なっていきます!
吉田:今回は古見さんにお話を伺っていくということで、いくつか質問をしながら掘り下げていく形で進めていきたいと思います。
よろしくお願いいたします。
吉田:今回行かれた南極越冬隊は何次隊になりますか?
古見:今回の越冬隊は64次隊です。
吉田:古見さんはベテランの南極地域観測隊として経験をされていますが、今までで何回南極に行きましたか?
古見:今回の64次隊で6回目です。
吉田:6回目ですか!大原鉄工所社員の中で一番多いですよね?
古見:そうなります。
山本:日本の南極地域観測隊の中で見ても相当多いですよね。
古見:越冬隊だけで考えればね、越冬だけじゃなかったらもっと回数行ってる人はいる。
山本:夏隊も含めるとということですか?
古見:そう、夏隊も含めてであれば他に回数の多い人はいる。越冬隊のみでみれば今のところ回数としては1番かな。
吉田:実際に南極で行う具体的な職務内容について教えてください。
古見:設営機械(メンテナンス)のほとんどを自分たちで行っている、民間から来る人たちは自分の担当機器(古見さんなら雪上車)の整備。あとは他の人たちの手伝い(発電機メンテナンス等)や燃料等の生活にかかわるもの全般の維持管理を行っている。
吉田:観測がメインだと思うんですけど、それ以外にもライフラインを補うために各分野に強い企業から推薦された隊員が集まって越冬隊を組むような感じですね。南極に向かう前に研修もありますよね?どれくらいの期間研修を行って実際に観測隊で活動されるまでのスケジュールを教えてください。
古見:越冬隊は7月から極地研採用になるね、夏隊だと9月から採用になる人もいる。7月から南極で使う部品の調達が始まって、調達をしながら7月下旬から9月中旬くらいまで各種講習があるかな。
調達部品が8月中旬から入荷が始まって、9月に荷造りとしらせに乗せる段取りを始める。10月からはしらせに実際に積み込み始めるけどコロナ禍の期間はしらせには行かなかったね、コロナが始まる前は荷物の確認等で立ち合いも行ったけど。しらせに荷物を積み込めば国内での仕事はほとんど終わり。あとは出発を待つだけ。
吉田:研修の内容は大原鉄工所であれば南極での雪上車の使い方を他の隊員に講習するのですか?
古見:国内でやるのは車両系の人に行う整備の講習が主で、雪上車の操縦等は現地に行ってから越冬隊の人全員を対象に行います。国内で行う研修は各設営機械の2,3日程度のメンテナンスの研修を行っている。
吉田:他の企業の機械だったり技術だったりを学んでいざという時に対応できるようにするのが目的ということですね。
古見:南極でやるのはほとんど部品の交換、今は分からなかったらメーカーに電話やLINEで聞きながらメンテナンスを行っている。
そういう面では昔と比べて今は便利になったね。(当時最初に行った時はネットに繋がっている設備が1台のみでネット環境はなかった)今はネット環境の充実とLINEの普及によりビデオ通話もできるので便利になっている。
吉田:もし雪上車でトラブルが発生して修理等で長引いた場合は長時間屋外にいると命の危険がありますよね?
古見:内陸のドームは夏でもマイナス30℃から35℃だからね、10m掘削した場所で火の気がないとマイナス50℃くらいになるかなあ。手袋をしていないと手が凍傷になるんじゃないかと思うくらい過酷な環境。
吉田:迅速に修理対応することは大事になりますね。
古見:ドーム旅行の最中のトラブル対応は大変だけど、昭和基地にいる間は急ぐ必要があるかというとそうでもない。 代わりの車両があるから。
吉田:古見さん自身の南極での体験談を聞かせてください。今まで印象に残ったことなどはありますか?
古見:もう6回も行くと印象に残ったこともないんだよな(笑)一番最初に行った時のドーム旅行が印象に残ってるかな?
37次の越冬隊で一番最初に行った時はやることも全部初めてだったから印象に残ったかな。今となっては南極に行っても出張の延長としか思ってないからね。オーロラが出ていればたまにオーロラを見るけど南極の自然も慣れちゃったし。
自然現象とか動物(トウゾクカモメ、アザラジや運が良ければ皇帝ペンギンも見れる)に興味がある人は印象に残るかも。あとは基地から少し離れたところにエアーズロックみたいな大きさの一枚岩があって壮観だね。
吉田:一番最初に南極に行って感じたことを教えてください。
古見:一番最初に行ったときは自分のことで精一杯だったけど、2回目以降は一緒に行った人たちが次にまた来たくなるようにしてあげたいとは思ってるね。でないと次に繋がらないから。
南極地域観測隊を1回きりで終わって欲しくないところはあるよね、1回目は初めてということもありよくわからないうちに終わってしまうから。2回目、3回目になれば自分の役割がわかるようになり、「観測隊」として南極を楽しめるようになると思う。
吉田:なかなか複数回参加されている方は少ないですか?
古見:ほかの会社はなかなか一人に対して何回も観測隊として出せないらしい。倍率の問題や初めての人間を出したいという考えがあったり、年になると役職がついたりして出られなくなるらしい。
吉田:ほかの企業でも南極に行ってみたいという方はたくさんいるんですかね?
古見:いるんじゃないかな。行きたいって人が志願して来ているわけだから。大原鉄工所は最近社内公募するようになったけど、他の企業は昔から社内公募だったみたいだね。
吉田:やはり観測隊として経験するとレベルアップに繋がるものですか?
古見:正直仕事のスキルはつかないと思うよ?だって普段自分がやってることをやるわけだから。他の人の手伝いをするとスキルは身につくかもしれないけど会社で必要なスキルではないよね。人間関係のスキルは身につくかな。
行った人間個人のレベルは上がるかもしれないけど会社に必要なレベルが上がってるかといわれるとわからないところがあるね。応用の利く人間にはなるかもしれないけど、会社としては1年以上のブランクができるわけだから難しいところではある。
吉田:古見さんには聞くまでもないと思うんですけどもう一度南極行きたいですか?(笑)
古見:もう一度いけるんだったら南極で定年迎えたいな。どうせだったら(笑)
吉田:行きたい意欲は何から来ますか?
古見:行きたい意欲とは違うかもしれないけど向こうでの仕事のほうがよくわかってるから、逆に社内のほうがわからないことが多い。
(長年観測隊を経験しているから)南極に行っているほうが楽しいね。
吉田:観測隊員として参加して自分自身のためになったことを教えてください。
古見:幅広いスキルが身についたことがよかったかな?大原鉄工所で水門事業とか産業機械、プラントの代理人とかも出ていたから車両系専属の人が行くよりは色々な経験があって、他のことも広く知っていたから南極で役に立つことはあったかな。
吉田:そうなんですね。他には、基地で不自由なく生活できるとのことですが基地の中はどんな設備が入っているのですか?
古見:基地の中は日本とほとんど一緒で、発電機、冷凍冷蔵生活に必要な設備はほとんどあるよね。今年からは新しいシステムも入ってネット環境がさらに快適になるらしい。移動タイプもあるからドーム旅行中でも利用可能。
インフラはもうほとんど国内と変わらなくなってきていて、国内にあるものは昭和基地にほとんどあると思っていいかな。生活に不自由な面はほとんどないね。最初に行ったときはネットにつながっている機械は1台しかなくて、ほとんどファックスでのやり取りだった。今はリアルタイムで国内とビデオ通話を繋いで作業員の目線で状況を把握してリモートを受けることもできる。
吉田:休みの日とか業務後など南極での楽しみ方はどういったものがありますか?
古見:休みの時でも停電とかの突発的な事態には対応しなくちゃならないから常にそれがついて回って楽々は休んでいられないけど、楽しみと言ったら魚釣りとか野外に出るのが楽しみになるかな。
常に大変なことをしている自分に対する自己肯定感が楽しみになってくるよね(笑)要は南極で自分がどう楽しめるかかな?常に楽しみを見つけてやらないと嫌になってしまうし、日本でやらないことは南極でもやらないからね。
あとは係の仕事として農協(水耕栽培)、漁協、発酵(ビール作り)とかの係があって、そのような係を楽しめる人は面白いと思う。あとは月一であるイベントとかミッドウインター(夏至ごろ1週間程)が楽しみかな。でも最大の楽しみはしらせの到着だと思うよ(笑)やっと来てくれた安心感は何にも代え難いね。
古見さん今回はご協力いただきありがとうございました!
本HPでは今後も実際に南極に赴いた社員にインタビューを行い、更新していく予定です!